「義父上?」

呼び止める依楼葉を、右大臣がじーっと見つめる。

「そなたにとっても、悪い話ではないと思うが、その崇文が依楼葉の事を気に入ってのう。」

「はあ!?」

あまりにも驚いて、依楼葉はその場に、立ち止まってしまった。

「崇文は一見、女のように色が白くて、なよなよしているが……」

「どこが、悪い話ではないのですか?」

「まあ、最後まで話を聞け。」

右大臣は、扇で依楼葉の胸を叩いた。

「左大将を務めているほどの文化人じゃ。文に優れているそなたにも、通じるモノがあると思うが。」


急に降って湧いたような縁談話。

それもこの前あった夏の右大将・橘厚弘と、対を成す左大将・藤原崇文。

時の帝に恋をした花見の祝宴で、自分を気に入ってくれるなんて、これも不思議な縁だと、依楼葉は感じた。


「しかし、あのじゃじゃ馬を気に入るとは、崇文ももの好きじゃ。」