右大臣の仕事は、左大臣の父と、あまり変わりはないのだが、人柄のせいか、とにかくいろいろな人会った。

だが、皆”春の中納言”の噂は聞いているようで、どの人も優しい眼差しで、向かい入れてくれた。

「ほう。これが噂に名高い、春の中納言か。」

特に若い娘を持つ年配の公達からは、なめるように見られた。

「なるほど。眉目秀麗とは正にこの事。女御達が騒ぎ立てるのも、分かる。」

すると扇を片手に、依楼葉の耳元で、こんな事を囁いていく者もいた。


「右大臣の姫君にお飽きなされたら、こちらにもお寄りなされ。自慢の姫君を紹介しよう。」

「こらこら。私の前で、そのような事を婿殿に、吹き込まないでほしい。」

モテる婿を持つと、妻の父として、大変だ。


「ふうー。どこへ行っても、婿殿の話じゃ。一向にお勤め場所へ着かぬ。」

終いには、右大臣の方が根をあげてしまった。

「申し訳ございません、義父上様。」