中納言としての仕事に、少しずつ慣れてきた依楼葉。

今日は、右大臣・藤原武徳に付き添う事になった。


「大丈夫だろうか。」

父は、朝から心配で、依楼葉の周りをウロウロと、歩き回った。

「大丈夫です、父上様。最近は、男の振りも慣れてきましたから。」

「そうか?」

相手は父の従兄弟だが、春の中納言・藤原咲哉の正体が、依楼葉である事は、知らない。

娘婿の咲哉なのだから、お勤めの件はお手柔らかに指導してくれそうだが、女だと分かっては、どうなのだろうか。


「関白左大臣殿!」

そうこうしている間に、右大臣・藤原武徳が、やってきてしまった。

「お早うございます。」

依楼葉は、丁寧に挨拶をした。

「お早う。今日は頼みましたぞ、春の中納言。」

「はい。」

父の心配を他所に、娘婿と務めができると、右大臣は喜んでいる。


「頼みましたぞ、右大臣殿。」

「はいはい。」

そんな軽い返事をして、右大臣は依楼葉を連れて行ってしまった。