「依楼葉には、依楼葉に似合う殿方がいるのです。そう言う方が現れるまで、ゆっくり待とうではありませんか。」

「そう言う方が、いらっしゃればよろしいのですけどね。」

東の方は、チラッと依楼葉を見た。

これまた左大臣家の姫君らしからず、ブスッとしている。


「なぜこのように、一方は殿方らしく、一方は姫君らしからず、なってしまったのか。」

東の方が、遠くの空を見上げた時だ。

咲哉が、ゴホゴホッと咳をし始めた。

「風邪か?咲哉?」

依楼葉が、近づく。

「ああ、大事ない。この頃、よく出るのだ。」

依楼葉と、母の東の方が揃って、心配する。


「それは大変じゃ。後で薬を届けさせましょう。」

「有難うございます、母上様。」

その時だ。

また咲哉が、咳込んだ。

「咲哉……」

背中を摩ろうとした依楼葉は、見てしまった。


口元を覆った咲哉の手に、血がついているのを。