「承知致しました。精一杯、お勤めを果たします。」

そう答えた依楼葉に、父は微笑みかけた。

「大丈夫じゃ。そなたは、思いのほか賢い。我らも何かあれば、助けに入る。これも経験と思うて、思い切って飛び込んでみることじゃ。」

「はい。」

依楼葉の頷きに、父・藤原照明も頷く。


こうして、翌日。

中納言・藤原咲哉に扮した依楼葉は、初めて帝の前に、侍る事になった。

いつもと同じ、黒い衣装を身に着けても、緊張の度合いは、計り知れない。

遂に依楼葉は、帝がおわす清涼殿に、足を踏み入れた。


最初は父である、関白左大臣・藤原照明の後ろに、座っていた。

「帝におわせられましては、お健やかなるご様子、お喜び申しあげます。」

すると帝の側に侍る者が、それを帝に伝える。

その者を介して、また帝の言葉が伝わってくる。

その役目を、依楼葉も担うのだ。


「関白殿。帝は、そなたもお健やかである様子、加えてご子息の回復を、お喜びである。」