そんな中、中納言の仕事を初めて1か月した頃。

父から、こんな話をされた。

「春の中納言。実は今から、帝のお側に侍る事になった。」

「そうなのですか。父上様は、関白も歴任されてますから、大変ですね。」

時の帝は五条帝と言って、父・藤原照明の人柄を買って、ぜひ関白にと申された。

関白は本来、帝(天皇)に代わって、政治を行う役職なのだが、五条帝は、既に成人している。

時を伺っては、五条帝と藤原照明とで、政治の事を話し合っていたのだ。


「今までは、そなたの身が重かろうと、他の中納言に側について貰っていたのだが、どうだろう。この度はそなたが、父の側につかぬか?」

依楼葉の肩に、重い重責が圧し掛かる。

「……私に、勤まりましょうか。」

「まだ重き荷と思うのなら、今回も他の中納言に頼んでみる。」

依楼葉は、じっと考えた。


いくら病み上がりとは言え、断り続けたら咲哉の評判が、落ちるのではないか。