「も、申し訳ございません。」

桃花は、床に手をついた。

「つい、いらぬ事を申し上げました。その……流行り病にかかる前の背の君様は、毎晩のように激しく、私をお抱きになるものですから。」

依楼葉は、何事が起っているのか、分からないと言うのに、顔を真っ赤にし、その頬を上着で隠した。


あの咲哉が……

あの咲哉が!

夜な夜な女と、乱れていたなんて!!

女房達の事と言い、夫婦関係といい、咲哉の女関係は、依楼葉が到底想像できないものだった。


「それとも……他に、心を通わせる女子が、おいでなのですか?」

「えっ?」

依楼葉と顔を合わせた桃花は、どこか悲しげだった。

「聞きました。春の中納言様は、恋をしているのだと。」

依楼葉は、ドキッとした。

遂に噂は、ここまでやってきていたのか。

「我らは夫婦と言えども、あなた様の心に、他の女がいるのでは……そのお気持ちを止める事など、私にはできません。」