それで、一気に目が覚めた依楼葉。

まだ男女の睦事を知らない依楼葉には、ただただ恐ろしいばかりだ。

依楼葉はそのまま起き上がると、御帳台の方に、体を寄せた。


「どうされました?」

それでも桃花は、依楼葉に近づいてくる。

「何を遠慮されているのです?我ら夫婦では、ありませぬか。」

依楼葉は、体が震えてきた。

「なんだか今日の背の君様……睦事を知らない童のよう。」


その桃花の言葉が、子供だと馬鹿にされたようで、依楼葉の胸に深く突き刺さった。

まるで自分の方が、恋も情事も、嘆きも悲しみも知っている、大人の女性だと言わんばかりだ。


「桃花。私は、そのような浅ましい事は、あまり好きではないのだ。」

桃花は、目を丸くした。

「あなたは本当に……背の君様ですか?」

ハッとした依楼葉は、桃花と見つめ合った。

「当たり前ではないか。私が藤原咲哉でなくて、誰がそうだと申すのだ。」