依楼葉は、心なしかほっとした。

「さあ、召しあがれ。背の君様。」

桃花は、優しい笑顔を見せてくれた。

「ありがとう。」


よく考えてみたら、桃花は夫である咲哉の死を知らされず、その上最後の別れもできぬまま、咲哉は土に返ってしまった。

それを考えると、今は咲哉の死を、知らせるべきではないと、依楼葉は思った。


食事が終わりお酒を呑むと、依楼葉はウトウトと、し始めた。

「お疲れのご様子ですね。」

「ああ……我は酒を呑むと、眠くなるらしい。」

依楼葉は、大きな欠伸をした。

つい油断して、自分の事を”我”と言ってしまった事も、気づかずに。


「もう、お休みなさいませ。」

桃花の言う通りに、依楼葉は御帳台の中へと入って行った。

中には敷物が敷いてあって、依楼葉は倒れるように、横になった。

その時だ。

「背の君様……」

ゆっくりと桃花が、依楼葉にすり寄ってきた。