「今日は、武芸の稽古はしないのですか?」

「するする!」

そう言って依楼葉は、次々と衣服を脱ぎ棄て、袴一枚になると、そのまま庭へと飛び降りてしまった。

「これ!依楼葉!」

それを見た母・東の方は真っ青になって、意識を失う寸前。


「佐島!刀だ!」

「はい!」

勿論、本当の刀ではない。

木で作った木刀なのだが、姫君らしく長刀と言うわけではない。

殿方と同じように、刀なのだ。

「行きますよ、和歌様。」

それ故か、”若様”にかけて、和歌様と呼ばれる事も。


「どこからでも、かかってこい!佐島!」

その上、武芸の達人・佐島と同等の技を持つ。

「はぁあああ!」

「やああああ!」


その様子をただ一人・優しい眼差しで見る若者がいた。

双子の兄・咲哉だ。

「あっ、咲哉!」

依楼葉の言葉で、佐島は膝をついた。

「これは、春の君様。」

「いつもご苦労だな、佐島。」