「申し訳ありません。宮中の花見の手伝いをしに参りましたのに、すっかり寝入ってしまったようで。」

依楼葉は尚も、周りをキョロキョロと見回した。

「そうですか。それならどうでしょう。一緒に、花見をしませんか?」

「えっ?」

公達と依楼葉は、顔を見合わせた。

よく見れば、すっきりとした目鼻立ちに、艶やか長い黒髪。

色気が漂ういい男だ。


「あの……」

「いいでしょう?私も、一人なのです。一緒に花見を楽しんで頂ければ、嬉しい。」

その言葉に連れられて、依楼葉はその貴族の隣に、腰を降ろしてしまった。

「お酒は、たしなまれますか?」

「ええ、少々なら。」

すると公達は、盃を依楼葉に差し出した。

受け取る依楼葉。

その盃に、公達は酒を注いでくれた。


「頂きます。」

「どうぞ。」

口にすると、今まで飲んだ事がない程、美味しいお酒だ。

「美味しい……」

「それは、よかった。」