花見が始まる前に、どうにかお膳を全て運び終えた依楼葉。

中納言の仕事も大変だが、この仕事も大変だ。

「さすがは、和歌の姫君。」

「ははは……」

綾子もササさと、仕事をこなす女房だが、それだけでは追い付かない、この花見の盛大さに、依楼葉はただ驚くばかりだ。


「そろそろ、花見が始まりますよ。」

綾子がそう言うと、花見はにわかに始まった。

「我々も、帝や女御様のお世話をしながら、花見を楽しむのよ。」

「へえ……」

今迄は、左大臣家の屋敷にいるだけで、このような目出度い席には、参加した事がなかった依楼葉。

「じゃあ今日は、私が仕える藤壺の女御様のお世話に入りましょうか。」

「ええ、そうしましょう。」

綾子と一緒であれば、頼もしい。

依楼葉は、綾子について行った。


「藤壺様。これに控えるは、左大臣、藤原照明の娘で、和歌の姫君であります。」

「まあ、あなたが。」