皆、俯いて隼也の話を聞いているのが、もっと気に食わない橘文弘は、謝る気など毛頭ない。

「では、そなたがどこかで、拾ったのではないのか?」

もっと、隼也の事を攻撃し続けた。

「お父上!秋の中納言殿が、そのようなお人ではないと言う事は、お父上も、十分ご承知のはずです。」

息子の橘厚弘も、反論した。

「知っておるが、気の迷いと言うのもある。」

「お父上!」

太政大臣家と関白左大臣家の間に、睨み合いが続いた時だった。


どこからか、依楼葉が姿が現した。

「大変不躾ながら、今のお話、お側で聞いておりました。」

「さすが、関白左大臣家の姫君。よい教育をされておる。」

そこでも、橘厚弘は嫌みを言った。

「太政大臣殿!」

また父・藤原照明が、大きな声を出した時だ。

帝である春の君が、間に入った。

「太政大臣。和歌の姫君は、私の尚侍だ。側に侍る事が務めだ。」

「そうでございましたね。」