「はあ……」

「そなたも、左大臣家の姫君ならば、こういう時ぐらい”女としての”お勤めを果たしなさい。」

母にそう言い聞かされては、依楼葉もうんと言うしかない。

「分かりました。髪はかもじを付ければいいこと。我も協力しましょう。」

「そう、こなければ。」

なんとなく、母の方が乗り気だ。


「母上様。この状況を、楽しんでおられるのか?」

「当たり前です。姫君を持つ親は、この時を待っていたとばかりに、支度をすると思いますよ?」

そう言って母は、笑顔が止まらない。


女房と言えば、宮中に仕える女達を指すのだが、身分の高い家の子女しか、宮中の帝や女御達のお世話はできない。

その中からは出世し、尚侍と言う天皇や、皇太子、皇后などの世話をする者達もいて、ゆくゆくは天皇の目に留まり、妃になる者もいた。

だからこそ、身分の高い家の姫君を持つ親は、どうにかして自分の娘を女房にしたがるのだった。