そこに隣に座る左大将・藤原崇文が、隼也を気遣った。

「具合でも悪いのですか?秋の中納言殿。」

返事をしようにも、隼也は返事できない。

「まさか、誘われてないのでは?」

わざと橘文弘が言う。

「えっ?」

それには、息子の橘厚弘も驚いた。


「これは失礼した。既にどなたかが誘ったのかと、思うておりました。」

「そうですとも。今をときめく中納言殿を誘わずして、何の歌会か。共に参りましょう。」

橘厚弘も藤原崇文も、隼也を盛り上げた。


「ほう。どなたか誘ったと思う程の中納言殿を、どなたも誘わないとは、これ如何に。」

更に橘文弘は続けた。

「皆、秋の中納言殿が、本当に関白左大臣殿の息子か、疑っておられるから、表面だけの付き合いになるのでは?」

これには、皆、目を大きくして驚いた。

「のう、右大臣殿。」

「えっ!」

隼也以外の目は、右大将・藤原武徳に注がれた。