ある日の事。

帝の前に、太政大臣・橘文弘とその息子、右大将・橘厚弘、関白左大臣・藤原照明、その息子、中納言・藤原隼也、右大臣・藤原武徳・その息子、左大将・藤原崇文が集まった。

内容は他愛のない、世間話だったのだが、それぞれの大臣と息子達が集まったとの事で、それぞれの親達が盛り上がったのだ。


そんな時だった。

帝である春の君は、一つの質問を投げかけた。

「そう言えば、若い公達達の間で今度、歌会が開かれると聞いた。」

それに答えたのは、右大将で頭中将・橘厚弘だった。

「はい。よろしければぜひ、主上もお寄り下さい。」

近くにいた左大将・藤原崇文も頷いた。

「そうですね。主上、ぜひ。」

皆で、その話題に盛り上がるかと思えば、隼也だけは下を向いている。


「おや、秋の中納言殿。そなたも誘われているのでしょう？」

細い目で隼也を見たのは、太政大臣・橘文弘だった。

「いえ、私は……」