右大臣・藤原武徳が帰った後、父と母と依楼葉は、うーんと唸ってしまった。

「何とも……いつも世話になっている、従兄弟の頼み事故、なんとかして、叶えてやりたいのだが……」

父と母は、じーっと依楼葉を見つめた。

「それは我に、花見に参加せよと申されるのか?」

依楼葉は、祭りごとは好きだったが、今回は意味合いが違う。

女房に扮すると言うのは、”あの”女房達の中に入るのだ。


厚い白粉を塗りながら、真っ赤な口紅を施す女房達。

あれを見るだけで、依楼葉は吐き気を催すのだ。

おかげで、女房達からは、病気をしてから春の君様は、恥ずかしがり屋になったと、余計に人気になってしまった。

どうしても、あの中には行きたくない!!


「依楼葉。」

久しぶりに、母・東の方に名前を呼ばれた。

「宮中の女房と言うのは、誰にでもなれるものではありません。三大臣家の他には、数えられるほどの、殿上人の姫君しかなれるのです。」