「どうか、教えては下さいませんか?」

依楼葉は、尚も藤原崇文に近づいた。

「ねえ、夏の左大将様。」

艶めかしい目で、依楼葉が藤原崇文を見ると、彼は困った顔をした。

「相変わらずですね。ここだけの話ですよ。」

「ええ、ええ。さすがは、夏の左大将様。」

藤原崇文は、周りを見ると扇を広げた。


「尚侍も気に病むかもしれませんが、皆、秋の中納言殿を疑っております。」

「疑っている?」

藤原崇文は、頷いた。

「以前の春の中納言殿がお亡くなりになり、直ぐに左大臣家に入ったと。本当に左大臣家の子か、分からぬ故、何とも不可解だと。」

「そんな……」

前からそんな噂は、耳にしていたが、それが酷くなっていったと言う事なのだろうか。

「秋の中納言殿は、最初は田舎臭かったものの、ここ数年でご立派な公達になられた。加えて才も秀でている故、何かと皆、不満なのでしょう。」

藤原崇文は、気を遣っているようだ。