「冗談は、止して下さい。」

「はははっ!」

相変わらずの軽い感じだなと、依楼葉が思った時だ。

彼なら、何か話してくれるのではないかと、考えたのだ。


「そう言えば、夏の左大将様。」

依楼葉は、藤原崇文を奥の部屋へと、連れて行った。

「何の、お話かな。」

勿論、嬉しそうについて行く、藤原崇文。

二人きりになるのは、容易な事だった。


「今度、若い公達で歌会を行うだとか。」

「噂を聞くのが早いですね。さすが和歌の尚侍。」

「茶化さないで下さい。」

依楼葉は、もっと藤原崇文の元へ寄った。

「弟の秋の中納言の事で、何か聞いておりませんか?」

藤原崇文は、それを聞いてチラッと、依楼葉の方を見た。

「……何か、知ってらっしゃるのですね。」

「まあ、それも噂なのですけどね。」

そう言って顎に手を置いた途端、藤原崇文はその噂を話そうとはしない。

こういう時に限って、口が堅くなるのだ。