ある日。
関白左大臣の藤原照明と、その息子・藤原隼也が歩いていた時だ。
そこへ、太政大臣・橘文弘がやってきた。
「これはこれは、太政大臣殿。」
父・照明と息子・隼也が頭を下げる。
「これは、関白左大臣殿。」
文弘は、ちらっと隼也を見る。
「……秋の中納言殿は、しばらく見ぬ間に、成長あそばされましたな。」
隼也が『母から、父は藤原照明殿だと聞いて、参りました。』と、言って左大臣家に来てから、数年経った。
今では立派な、公達の一人だ。
「ところで秋の中納言殿は、今度の歌会には、ご出席されますかな。」
「歌会……ですか?」
父・藤原照明と、息子の隼也が、顔を合わせた。
歌会があるなど、左大臣である照明も、聞いてはいない事だ。
「ああ、失礼。若い公達ばかりの歌会にて、我々親世代は、呼ばれてはいないのですよ。」
橘文弘は、扇で微笑みを隠した。
関白左大臣の藤原照明と、その息子・藤原隼也が歩いていた時だ。
そこへ、太政大臣・橘文弘がやってきた。
「これはこれは、太政大臣殿。」
父・照明と息子・隼也が頭を下げる。
「これは、関白左大臣殿。」
文弘は、ちらっと隼也を見る。
「……秋の中納言殿は、しばらく見ぬ間に、成長あそばされましたな。」
隼也が『母から、父は藤原照明殿だと聞いて、参りました。』と、言って左大臣家に来てから、数年経った。
今では立派な、公達の一人だ。
「ところで秋の中納言殿は、今度の歌会には、ご出席されますかな。」
「歌会……ですか?」
父・藤原照明と、息子の隼也が、顔を合わせた。
歌会があるなど、左大臣である照明も、聞いてはいない事だ。
「ああ、失礼。若い公達ばかりの歌会にて、我々親世代は、呼ばれてはいないのですよ。」
橘文弘は、扇で微笑みを隠した。