それが運の悪い事に、桜子の体にしがみついてしまったのだ。

桜子はそのまま、庭へ落ちて行く。

「女御様!」

綾子が手を伸ばした時には、桜子は庭に倒れていた。


「うぅぅん……うぅぅぅ…ん……」

桜子は肩を抑えて、唸っている。

「藤壺の女御様!」

2、3人の女房が庭に降り、他の女房達も、誰か別な物を呼びに行く。

「しっかりしてください、女御様!」

綾子は、お腹の子供が心配になって、桜子のお腹の方を見た。

だが、桜子はお腹を押さえる事しない。

あれだけ派手に転げ落ちれば、お腹の子供が流れても不思議ではないのに、その気配すらない。

「もしや……」

綾子は、息をゴクンと飲み干した。


騒ぎを聞き、駆けつけたのは帝と、夏の右大将であった。

「これは一体……」

帝と共に、庭を見た夏の右大将・橘厚弘は、倒れている妹の姿を見つけた。

「さ、桜子!」

慌てて庭に降り、妹を抱き上げた。