思い当たると言えば、桜子から貰った上衣があるのだが、それの事を言っているのだろうか。

「……どのような、柄の物でしょう。」

「ちょうど、そなたが今、着ている物と同じ柄じゃ。」

そう。

幸か不幸か、今日依楼葉は、桜子から頂いた上衣を身に着けていたのだ。

「こちらは、尚侍になった際に、藤壺の女御様から頂いた衣でございます。」

依楼葉がそう言うと、ジロッと睨みつける桜子。

「そうであったか?」

「は、はい。」

聞かれた綾子は、申し訳なさそうにヘコヘコと、頭を下げている。


長年仕えてきた綾子の方を頼るのは当たり前の事だし、既に藤壺を離れた依楼葉を、信じろと言うのもない。

ただこれ程までにも、疑いの目を向けられるのは、依楼葉も心が痛む。


「いいや、和歌が盗んだのではないか?」

「えっ?」

さすがの依楼葉も、これには驚いた。

「藤壺の女御様?」