そして、依楼葉と帝はこの一件以来、またお互いの気持ちを理解した為か、以前にもまして、信頼し合うようになった。

その事か、傍目から見ても分かる程で、桜子も前にも増して、依楼葉に嫉妬するようになった。


桜子は、一日に何度も依楼葉を呼び出し、難癖をつけるようになったのだ。

しかもそれは決まって、帝と共に勤めを果たしている時であった。


「和歌の尚侍様。」

そして呼びに来るのは、いつも綾子なのだった。

「もしや……」

「はい。」

二人はお互いの顔を見る度に、ため息をついた。


「もう、我慢がならん。」

依楼葉が、桜子に呼び出されるのを、毎日のように見ていた帝は、扇を床に叩きつけた。

「誰ぞの尚侍だと思うておる。」

「申し訳ありません!」

そして謝るのは、綾子だけ。

決して桜子から、謝りの言葉が出てくる事はなかった。


「主上。藤壺様は、ご懐妊でお気持ちが、苛立っておられるのです。」