それから数日後。

左大臣家に、右大臣・藤原武徳がやってきた。

「右大臣殿。いやいや、これは。娘御の顔でも、見に来られたか?」

「ははは。それもあるのだが……」

武徳は、照明の側に寄った。

「実は、折り入って頼みがあるのだ。」

「頼み、でございますか?」


照明は自分の部屋に、武徳を招いた。

当然東の方、そして咲哉に扮する依楼葉も、同席した。


「あれ?いつもいる、じゃじゃ馬の姿が……」

「はい?」

依楼葉は、武徳を睨みつけた。

その依楼葉を、東の方が扇で、叩きつける。

「ほほほ。実は依楼葉は、私の実家で行儀見習いをさせておりまして……」

「おお、そうであったか。」

それを聞いて、急に明るくなる武徳。


「ところで、頼みと言うのは?」

照明が、話を変えた。

「ああ、その事じゃ。」

武徳は、ゴホンと咳払いをした。


「今度、宮中で花見をするのだが、一人女房が足りぬのだ。」