「どうか、どうか。ご自分の女御様を、お信じなさいませ。」

依楼葉は、もう一つの手も、春の君の手の上に重ね合わせた。

「……そなたは、私を恨んではいないのか。」

「恨むだなんて。反ってあなた様のお子様ができた事に、喜びを感じております。」

依楼葉は、無理に笑顔を作った。

「尚侍……」


春の君は、依楼葉を抱きしめた。

「すまない。」

「どうして、謝るのです?」

「そなたを、傷つけてしまった。」

春の君は、依楼葉が悲しく思っている事を、知っていたのだ。


「信じてほしい。藤壺の事は、何かの間違いだと。」

依楼葉は、そこまで自分に気を遣ってくれる春の君の気持ちが嬉しく思う反面、どうしてそこまで疑うのか、分からなかった。

「……帝。」

依楼葉は最後に、そう呼びかけた。

「そう思われても、藤壺の女御様の事、一旦は受け止めてあげて下さい。」

依楼葉の、心からの願いだった。