「分かりました。」

依楼葉は、繋がれた手をそのままにして、話を聞こうと思った。

「藤壺の事、聞いたと思うが。」

「はい。ご懐妊されたと。」

「まだ、信じないでほしい。」

依楼葉は、帝の瞳を見つめた。


「まだ本当か分からない。」

「なぜですか?なぜ、ご自分のただ一人の女御様を、ご信じにならないのですか?」

依楼葉は、春の君を責めた。

「藤壺の女御の元は、そなたが尚侍になってから、訪れていない。」

依楼葉は、手から伝わってくるその情熱に、戸惑った。

「本当だ。信じてくれ。」

自分の子供ができた事よりも、恋人からの疑いを、晴らそうとしているのか。

依楼葉は、ゆっくりと頭を横に振った。


「それは、何とも言えません。」

「どうして?」

「2か月前まで、お通いになっているのであれば、ご懐妊の兆候があるのは十分でございます。」

依楼葉は、桜の君に言って聞かせた。