二人は、また睨み合う。

最近この二人は、睨み合ってばかりだ。


「では、まさか……嘘の懐妊か?」

桜子が、唇を噛み締めた。

「……やっと、お子ができたと言うのに、不義を疑われ、嘘だとも言われるとは!人を愚弄するにも、程がある。」

桜子は、悔しくて悔しくて、涙が出てきた。

「お戻りください!顔など、見たくはありません。」

帝は悔しさを前面に出す桜子を、そのままにして、部屋を離れた。


心配したのは、桜子に仕える綾子だ。

「藤壺の女御様。」

「……何です?」

黙って耐える桜子に、綾子も涙を流し始めた。

「もし、懐妊なされているなら、医師に診て頂きましょう。」

すると桜子は、クルッと後ろを向いた。

「そなたまで、私の懐妊を、疑うのか?」

「そうではありません!」


桜子は、月のものが来ない事を理由に、懐妊したと言い張っているのだ。