「あの……主上、藤壺の女御様。」

依楼葉は、自分の落ち度で、この二人が睨み合っているかと思うと、胸が張り裂けそうだった。

「尚侍は、私が直接召し抱えている者。例え女御であっても、藤壺が口を出す事ではない。」

帝ははっきりと、桜子に伝えた。

「では主上は、落ち度のある和歌を、これからも尚侍として仕えさせると?」

「その気だが?」

桜子は、手で衣を握りしめた。


「……それは、尚侍をご寵愛されているからですか?」

依楼葉は、桜子の方を見た。

桜子の目には、涙が溜まっている。

このような時に、二人の関係が明るみに出ては、同じ事を思う人も出てくる。

「先ほども、そのような事を申していたな。ただの噂だ。」

だが、帝は冷静に否定した。

「噂?先日も、昼間から御簾納の中に、二人で消えて行ったと申す者がおりました。」

桜子は、だんだん興奮してくる。