「うっ!」

依楼葉は、口元を扇で隠すと、チラッとその女房を見ながら、微笑んだ。

それから、ずっとその繰り返し。

依楼葉は遂に、化粧ばかりの女房達に、酔ってしまった。


「ち、父上。気持ち、悪い……」

「えっ?」

途端に依楼葉は、空いている部屋に駆け込むと、はぁはぁと呼吸困難になった。

「大丈夫か?依楼葉。」

父が、依楼葉の背中を摩る。

その様子を見ていた女房達。


「ああ、私が春の君様の背中を、摩って差し上げたい。」

「あら、私よ。」

「もう。私ならすぐ、春の君様の具合も、良くなるわ。」

それを見た依楼葉は、本当に吐きそうになってしまった。


「慣れじゃ、慣れじゃ。依楼葉。」

「はい……」

何とか持ち直して、また歩き始める依楼葉だったが、この日だけは扇で顔を隠したままだった。


「まあ、春の君様。お顔を見せて。」

「春の君様~。」

それでも女房達の視線は、止まらなかった。