それを見て依楼葉は、もう覚悟を決めた。

「どうぞ。私はここで、お話を聞いております。」

依楼葉の冷静な態度を見て、桜子は苛立ちを覚える。

「さすが、帝の寵愛を受けられてる方は、違いますね。」

嫌みたっぷりに、言った。


「しかし、別なお話も、耳に届いております。」

桜子は、依楼葉をちらっと見た。

「和歌の尚侍は、夏の右大将の文書を、主上に見せる前に、無くされたとか。」

昼の御殿は、シーンと静まり返った。

「その他にも、お湯殿のお湯加減を間違えたとか。一体、どうなっていると言うのですか。」

シーンと静まり返っている御殿の中、依楼葉が謝った。

「申し訳ございません。全ては尚侍である、私の落ち度でございます。」

「そなたは、口を挟まなくてよろしい!」

桜子は、依楼葉をぴしゃりと叱った。


「どういう事だ?藤壺。」

代わりに帝が、桜子に尋ねた。

「……尚侍は、和歌には重荷だったのではと。」

帝と桜子は、睨み合いを続けた。