だが依楼葉は、下を向いてしまった。

「和歌の君?」

「申し訳ありません。私は……」

依楼葉の目から、涙が零れた。

「私は……主上のつがいの鳥には、なれません。」


どうしてこんなにも、求められていると言うのに。

どうしてこんなにも、求めていると言うのに。

肝心なところで、桜子の顔が、ちらちらと浮かぶ。

自分は、あの人のようになれない。

他の姫が入内しても、自分が一番、この方を慕っていると、自信を持って言えない。

臆病で、弱くて。

これでは、他の姫のように、入内しても直ぐにお里下がりになってしまう。


「……では、なぜ涙を流す?」

依楼葉は、帝の言葉で我に返る。

「泣いてくれると言う事は、私を恋しいと、思うてくれているからではないのか?」

その通りだと、思えば思う程、また涙が出てきた。

「どうして、和歌の君は……私を諦めようとするのだ。」

帝は、依楼葉を抱き寄せた。