依楼葉は、顔を勢いよく上げた。

「では……」

「これからは、気をつけねばならぬのう。尚侍。」

そう言って帝は、微笑みかけてくれた。


「しかし、夏の右大将。気が利くのか、お節介なのか分からぬ。」

「えっ?」

帝は、文書の最後のだけ、依楼葉に見せた。

そこには、【いい加減恋しい姫君と、天の川を渡る事です、その為にこの文を、織姫に渡すのですからね。】と書いてあった。

「まあ。」

依楼葉と帝は、顔を合わせると、お互いに笑い合った。


すると帝は、依楼葉の手を取った。

周りを見ると、蔵人達は既に、姿がない。

「既に天の川を超えたと言っても、来年まで待てない。いっそ織姫と彦星でなく、比翼の鳥とならぬか?」

「主上……」

帝の瞳に、依楼葉の姿が映る。

「いつも、一緒にいよう。二人で一つの鳥になって、助け合って生きてはいけぬか?」

少しずつ帝の顔が、依楼葉に近づいて行った。