帝は文を受け取り、その中身に目を通した。

「あの……帝。」

「どうした?尚侍。」

依楼葉は、頭を上げられなかった。

「夏の右大将様は、中身について、帝へのご機嫌伺いだと申されておりました。本当なのでしょうか。」

「はて、そう尋ねるのは?」

「右大将様は、文を無くした私を気遣って、嘘を申していたのではないかと思うです。」

「ほう。」

「もしそうならば、主上。私をお叱り下さい。帝への文書を無くすなど、もっての外でございます。」


依楼葉がそう言うと、帝は深くため息をついた。

「さて。どうしようかね。」

依楼葉は、目を固く閉じた。

「確かにこの文には、今度の取水工事への意見が書いてある。大事な意見書と言えば、無くした罪は重い。」

「……はい。」

依楼葉はまた、体が震えてきた。

「だが書いた本人の夏の右大将が、私へのご機嫌伺いだと言うのならば、そうも取れる。」