夏の右大将は、何やら書き足すと、依楼葉にその文を渡した。

「いいですね。必ず、目の前で帝に、お渡しするのですよ。」

「はい。」

依楼葉は、改めて夏の右大将の、気の優しさを感じた気がした。

「右大将様。ありがとうございます。」

依楼葉は、改めて頭を下げた。

「何の。その文を帝がお読み申したら、もっと私に感謝したくなりますよ。」

「えっ?」

目を点にしている依楼葉に、夏の右大将はニコッと笑った。

「いえ。こちらのことです。」

「は……い……」

依楼葉は不思議に思いながら、急いで帝にその文を持って行った。


「ああ、和歌の尚侍。どこへ行っていた?」

帝は、突然いなくなった事を怒るどころか、心配さえしてくれていた。

「夏の右大将様の元へ、行っていました。」

「夏の君の元へ?」

依楼葉は先程の文を、帝に渡した。

「これは?」

「夏の右大将様より、帝へお渡ししてほしいと、預かった文でございます。」