「そなたは、さも重要な文書を無くしたと、体を震わせておいでだったが、中身は帝宛てのご機嫌伺いの文よ。誰かが拾い読んだとて、さもないものだ。」

笑顔を見せてくれた夏の右大将に、依楼葉は涙を浮かべるほど、嬉しく思った。

「……ではなぜ、そのような文を、直接帝にお渡しにならず、私に?」

すると夏の右大将は、クスクス笑いだした。

「申し訳ない。そなたが、帝が妹背だと思うていたので。」

「い、妹背!?」

依楼葉は、顔を赤くしながら、下を向いた。


「そのお顔ですと、まだ帝は、お通いになってはおられないのかな。」

「あの……誤解でございます。」

「まさか。帝からは、そなたを……」

「えっ?」

顔を上げた依楼葉は、何かを期待している顔をしていた。


と、なると帝はこの者に、お気持ちも打ち明けていないのかと、じれったくなった。

「和歌の尚侍。文をもう一度、預かってもよいか?」