「右大将様。誠に申し訳ございません。」

「どうしたのです?和歌の尚侍。そんなに慌てて。」

依楼葉は、手を握りしめた。

「……右大将様から預かった帝への文書、どこかへ無くしてしまいました。」

夏の右大将は黙ったまま、依楼葉を見続けた。

「申し訳……ありません。」

依楼葉は、声を震わせながら謝った。


それを見た夏の右大将は、クルッと背中を向けてしまった。

依楼葉は、額を床につけた。

「申し訳ございません!なんと……なんとお詫び申し上げたらよいか……」

依楼葉は、声だけではなく、体まで震えてきた。


だが、夏の右大将から想像もできない言葉が、返ってきた。

「今、書き直しております。しばらく待たれよ。」

依楼葉は、顔を上げた。

「……書き直して、頂けるのですか?」

「ああ。中身まで教えていなかった、私も悪い。」

しばらくして夏の右大将は、文を持って依楼葉の元へ、やってきた。