「まあ!大変!私も一緒に、探しましょう。」

こうして、依楼葉、橘の君、藤の君で文書を探したが、見つからなかった。

もちろん、お湯殿やその近辺を探してもだ。


「仕方ありません。もう一度、主人に頼んでみましょう。」

橘の君が、立ち上ろうとした。

「待って下さい、橘の君。」

それを依楼葉が止めた。

「これほど探してもないとは、仕方がありません。それに帝への文書なら、一刻も争う内容かもしれません。」

橘の君が言うのも、尤もだった。

「……そうですね。では、私が直にお願いにあがります。」

「和歌の尚侍……」

橘の君は、とても不安そうだ。

「無くした私が悪いのです。誠心誠意謝り、もう一度書いて頂くしかありません。」


依楼葉は直ぐに夏の右大将の元へ、駆けて行った。

「これはこれは、どうしたと言うのでしょう。」

夏の右大将も、そんな依楼葉の姿を見て、驚きだ。