藤壺の女御、橘の君に気を付けながら、依楼葉は尚侍としてのお勤めに日々励んでいた。

その中でも、心の支えになっていたのが、時々目を合わせて微笑んでくれる帝の存在だった。

そんな事を繰り返していくうちに、近くにいる藤の君にも、二人の間が、伝わってしまった。


「ふふふ。」

「どうしました?藤の君。」

藤の君は、依楼葉の側に寄った。

「和歌の尚侍は、帝をどう思われているのですか?」

「どうって……」

依楼葉は、花見の祝宴で会った帝を思い出した。

「……とても落ち着きがあって、艶やかで。それでいて、頼りがいのあるお方だと思います。」

「まあまあ!」

藤の君は、楽しそうに手を合わせた。

「和歌の尚侍が、そのように思われているのであれば、入内もそう遠くはないですね。」

依楼葉は、呆れたようにため息をついた。


「そのような事は、ないと思いますよ。」

「あら、どうしてですの?」