そして、何とか。

この危機を脱出した親子。

「そう言えば……」

「な、何ですか!?父上。」

一難去って、また一難?

依楼葉は、嫌な予感がした。


その時だ。

「ああ!春の君様!」

「お久しぶりに見たわ!」

「きゃああ!こちらを向いて!」

宮中にいる女房達が、依楼葉に向かって叫ぶ。

「ひぃいいいい。」

依楼葉は、また別な場所に移動する。

そうすると、簾の中から女房の声がした。


「ああ、春の君様。何とも艶めかしい。」

「病気をされてお痩せになられたか、一段とお美しくなられた。」

「見るだけでも、目が癒される。」

依楼葉は、口をあんぐり開けた。


「言い忘れたが、依楼葉。」

父は、依楼葉の耳元で囁いた。

「咲哉は、宮中でも一番の色男でな。」

「い、色男!?」

依楼葉は、自分の知らない咲哉の一面を垣間見た。


「妻の桃花に一途な反面、女房達の目線を楽しんでは、上手く受け流していた。」