「きちんと、確かめたのですか?」

「はい。」

「はいって……ではなぜ、そんなにお湯が熱くなっているのです?」


桜子が一歩、依楼葉に近づいた時だ。

「もう、よい。」

帝が桜子を止めた。

「ですが、主上!」

「怪我はなかったのだ。それでよいではないか。」

桜子は、一瞬不機嫌な顔をした。


帝が大変だと聞きつけ、心配し慌ててやってきたと言うのに、これでは面目も潰れる。

そのやりきれない気持ちの矛先は、依楼葉に向けられた。

「和歌。帝に気に入られたからと、気を抜いていたのではないですか?」

「申し訳ございません。そのような事は、ないのですが……」

依楼葉は、謝るしかなかった。

「今後、このような事が無きよう。」

「はい。」

そう言うと桜子達は、藤壺に帰って行った。


そして、桜子の一向の姿が見えなくなると、帝は依楼葉の側に、片足をついて座った。