依楼葉は早速、帝の側にいる女房の一人に、氷を取りに行かせた。

「申し訳ございません!」

依楼葉は、お湯殿で頭を下げた。

「急いで湯浴びができるように致しますので、もう少しだけお待ちください。」

依楼葉は上衣を脱ぐと、急いで水を運んできた。


「ああ、尚侍様自ら!」

周りの女房は、慌てて依楼葉と変わった。

それでも依楼葉は、別な桶を持って又、水を持ってきた。

「尚侍様。どうか、こちらでお控えなさって下さい。」

「構いません。お湯殿で何かあれば、尚侍である私の責。急いで帝が湯浴びができるようにせねば。」

その様子を見ていた帝は、クスクスと笑いだした。


「和歌の君は、ただ座っているだけのお姫様ではないようだね。」

そう言って、また笑っている。

見れば帝は、湯浴び用の衣一枚、着ているだけだった。

依楼葉は、女房の一人が持っていた自分の上衣を、帝に着させた。