その様子は、幼い頃の夢を語っていると言うのに、昔の忘れ去った夢を思い出しているようにも見えた。

その途端、綾子の目には桜子が、急に老けたように感じた。


「藤壺の女御様!私が、何とか致しますから!」

「綾子?」

鬼気迫った綾子に、桜子は怪訝そうな顔をする。

「誰が何と申しても、帝の女御様は、藤壺の女御様ただお一人でございます!」

もうすぐ落ちぶれるかもしれない自分に、励ましの言葉をかけてくれる綾子。

桜子は、胸が熱くなる程嬉しかった。


「だが、綾子。」

「はい。」

「もしかしたら、今までが間違いだったのかもしれない。」

「えっ?」

綾子は、眉をひそめた。

「本来、帝の後宮と言うのは、何人かの女御がいて当たり前の世界。子を成さない我一人の後宮と言うのが、珍しいのかもしれない。」

「そんな!」

綾子は、桜子の側に寄った。