「そんなに思い詰めるのなら、私から父上様に、お断りの旨を伝えましょうか?」

母は立ち上がって、父の後を追いかけようとした。

だが依楼葉は、そんな母の腕を掴んだ。

「母上様。もう、逃げる事は止めました。」

「依楼葉?」

「これも運命なのでしょう。私はもう、覚悟を決めました。」

強い眼差しで庭を眺める娘の背中を、母は心ゆくまで、摩り続けるのだった。


そして数日後。

宿下がりをしていた依楼葉が、五条帝の尚侍として、戻って来た。

「この度は、主上の尚侍と言う誉れを頂き、ありがとうございます。誠心誠意を持って、お仕え致します。」

頭を下げた依楼葉に、帝は御簾をあげ、依楼葉の前に片足をついて座った。

「……待っていた。」

その熱を帯びた声に、依楼葉は思い切って、顔を上げた。

「……私もです。」

その見つめ合う瞳に、帝も今迄とは違う依楼葉を感じた。