「では。私から、藤壺の女御様に、尚侍にする事を、お伝えしましょう。」

「そうか。やってくれるか。」

帝はまた、表情が明るくなった。


桜子に申し訳ないが、次の手を打たなければならないだろう。

橘文弘は、それを考えながら、藤壺を訪れた。

ちょうど、綾子も和歌の姫君もいない。


「まあ、父上様。」

桜子の機嫌も、良さそうだ。

「邪魔するよ。」

橘文弘は、桜子の斜め前に座った。

「今日、和歌の姫君は?」

「綾子と共に、上衣を取りに行っていますわ。」

「そうか。」

では、直ぐに帰って来てしまうかもしれない。

率直に話さなければ。


「桜子。実は帝より、願い事をされてね。」

「帝よりですか?珍しいですね。」

そうなのだ。

帝は、あまり自分の意見を、他人に押し付けない性格の持ち主なのだ。

「……和歌の姫君を、尚侍にしたいとの仰せだ。」

「えっ!?」

桜子の表情は、一転した。