「そこまで仰せとあれば、主上の尚侍に、差し出したい気持ちはあれど、和歌の姫君は、藤壺の女御様お気に入りの女房でして……」
「では、藤壺に直接、願い出ればよいか?」
扇の下で太政大臣・橘文弘は、唇を噛み締めた。
帝の機嫌が良いのは、自分が催した祝宴が、殊の外面白かったからではなく、優れた和歌の姫君に、心躍っただけだったのだ。
しかも、自分が恋い慕う者が、自分を支える役割に就くかもしれないと言うのだから、それは楽しみで楽しみで、仕方がないだろう。
「主上。一つだけ、お聞きした事がございます。」
「何であろう。」
和歌の姫君が尚侍になる前に、これだけは確かめておきたかった。
「和歌の姫君は、主上の恋い慕う相手。もしや尚侍にされた後、そのまま入内させるのでは?」
太政大臣・橘文弘の真剣な眼差しに、帝の表情は曇る。
「……そうか。それは、藤壺の父親として、懸念する事よ。」
「では、藤壺に直接、願い出ればよいか?」
扇の下で太政大臣・橘文弘は、唇を噛み締めた。
帝の機嫌が良いのは、自分が催した祝宴が、殊の外面白かったからではなく、優れた和歌の姫君に、心躍っただけだったのだ。
しかも、自分が恋い慕う者が、自分を支える役割に就くかもしれないと言うのだから、それは楽しみで楽しみで、仕方がないだろう。
「主上。一つだけ、お聞きした事がございます。」
「何であろう。」
和歌の姫君が尚侍になる前に、これだけは確かめておきたかった。
「和歌の姫君は、主上の恋い慕う相手。もしや尚侍にされた後、そのまま入内させるのでは?」
太政大臣・橘文弘の真剣な眼差しに、帝の表情は曇る。
「……そうか。それは、藤壺の父親として、懸念する事よ。」