「しかも、全く読めぬとは言っていない。嘘はついておらぬ。その上で周りの公達に配力し、”簡単な漢詩しか読めぬ”と申したのよ。」

帝は、生き生きと昨日の様子を、語っていた。

「だがそれでは、漢詩が読めると言って迎えた太政大臣家の面目は、潰れるであろう。そこで和歌の姫君は、立派な詩を披露した。これで太政大臣家も、救われただろう。」

「……はい。」

確かにあの時は、藤壺の女御様は、優秀な女御をお持ち。

さすがは太政大臣家よ、と自分の家を誉めた者もいた。


「あのような場で、そこまで気が使える者は、他にはおらぬ。ぜひ、我が尚侍として、存分に働いて貰いたいのだ。」

「しかし、あの者は……」

「あの者は、どうした?」


ここで、何か言えば、自分の立場が逆に危なくなる。

「……私の家で召し抱えた女房でして。」

「だからこそ、そなたにお願いだと、申している。」

声も細かく震えてくる。