太政大臣・橘文弘は、一計を案じた。

それは、橘文弘が催した酒宴の席の事であった。

それ自体、珍しい事なのだが、少し前から桜子より、帝のお渡りが少なくなっているのを、相談されていたのだ。

せっかく依楼葉を、藤壺に閉じ込める事に成功したのに、”和歌の姫君が来てから、帝の足が遠のいた”とあっては、計画も無駄になってしまう。

その上、また左大臣家に戻してしまったら、今の帝は、直ぐにでも和歌の姫君を尚侍にしてしまい、たちまち入内させてしまうだろう。

それだけは、避けねばならなかった。


さて、その夜。

久々の帝との祝宴に、桜子も機嫌がいい。

「さあ、どうぞ。主上。」

「ああ。」

桜子が、帝に酒を注ぐ。

父親から見ると、美男美女。

まるで雛祭りのお内裏様とお雛様のようだ。


そして、待っていましたとばかりに、橘文弘は桜子について来た、和歌の姫君を見つける。