「そうだ……いっその事、尚侍にしてはどうか。」

尚侍と言うのは、今で言う社長秘書みたいなモノだ。

「ほう……尚侍。」


ところが、この頃の尚侍は、女御の候補でもあった。

入内する前に箔をつける為に、尚侍になるのだ。

このまま依楼葉を尚侍にし、そのまま入内させたのでは、面白くないのは、橘文弘も同じだ。


「主上、それもようございます。」

「太政大臣……」

「但し。和歌の姫君は、我が太政大臣家で迎えた藤壺の女房。それを主上の尚侍に差し出すには、我が家とて本当にそれに相応しいか、見極めたいところ。如何でしょう。この件、私に任せてはくれませんか?」

尤もらしい意見を述べて、まずは間に入ろうと言う橘文弘の、寸法だ。

「分かった。そなたに、任せる。」

「はい。」

橘文弘は、一礼をすると帝の夜の御殿を去った。


「このまま事が進んでは、太政大臣家にとっても、桜子にとっても一大事よ。」