綾子のその言葉が、依楼葉の胸に突き刺さる。

「なのに、どうしてなのかしら。お子ができないなんて。」

「……仲が良すぎても、できにくいと言われますからね。」

「そうなの?」

綾子はウキウキしながら、二人の話をしている。


主人と思う相手が仲良く見えるのは、女房として喜ぶのが本当なのだろうが、依楼葉は心の底からそうできない。

依楼葉は初めて、この藤壺の女房になって、よかったのかと自問自答した。

だが父・藤原照明から、隼也の為にと言われている。

依楼葉は、頭を左右に激しく振った。


「どうしました?和歌。」

桜子に話しかけられ、我に返る依楼葉。

「和歌もご覧なさい。とても、綺麗よ。」

桜子に導かれるように、その隣に依楼葉は移った。

「本当ですね。綺麗……」

「ねえ。」

花に夢中になる桜子を他所に、依楼葉は背中を真っすぐにした。


その時だった。

桜子の隣にいる帝から、視線を感じた。