依楼葉はそんな綾子を、益々好きになるのだった。


翌日。

何やら藤壺が騒がしくなった。

「どうかされたの?」

依楼葉が女房の一人に尋ねると、息を切らしたように慌てていた。

「ああ、和歌の姫君。今から、帝が藤壺にお渡りになるのよ。」

「帝が……」

「あなたは、女御様のお側にいて頂戴。」

「はい。」

依楼葉は静かに、桜子の側へと近づいて行った。


こんな時に、考えてしまう。

帝は、桜の君は、女御様の前ではどのような姿を、お見せするのだろう。


「ああ、和歌。ちょうど良い時にきた。この上衣、如何かしら。」

桜子は帝のお渡りに、着ているものを気にしていた。

「とても、お似合いでございます。」

依楼葉は、静かに答えた。

それが綾子の、気に止まった。

「和歌、いつもの明るさがないのう。」

「そうですか?」

依楼葉は、頬に手を当てた。

「もしかして、固くなっているの?」